まるかいてさんかく

旅とカメラと妄想と

ずっと浪費



オタクの浪費について赤裸々に綴った同人誌が昨年の冬、発行された。瞬く間にオタク女子の心を掴み、自身の実体験をTwitterやBlogに書き散らす現象が発生した。その後、商業誌として一般書店にも並ぶようになった。本の詳細は上記リンクからどうぞ。浪費とは、愛を表現する一つのカタチである。

わたしも同人誌を読んで例に漏れず共感し、自分の体験をこれでもか!と話したかったのだけれど、今ひとつ「これ」とまとめきれないでいた。浪費癖はたしかにあるし、最近は舞台にはまっている。だからと言ってわたしの浪費は「舞台」かというとそれも違う……。なんだろう、と半年くらいぼんやり考えていたら、やっと自分の現状が見えた。そう、わたし流行り物好きなのだ。ミーハーなのだ。その特定ジャンルからすれば流行った時だけ騒ぎ、少しでも熱が冷めればいなくなる、真のファンとはとても言えないお呼びでない存在……書いてて悲しくなった。

いちばん古い記憶は『スターウォーズ エピソード1ファントム・メナス』。

歴代のSWを見たことがなく、テレビなどで予告を観て「昔のような古臭さがない、かっこいい」と子ども心にヒットし、映画館に観に行ってそのままパンフを買い、映画雑誌を購読し始め、読者プレゼントなんかに応募しまくった。のちのダース・ベイダーであるアナキンにめちゃくちゃハマったし、実際とてもかわいい。当時のペプシのボトルキャップは未だに未開封のままだ。

それからしばらくしてなぜか野球にハマった。長嶋監督時代のスタメンはすべてフルネームで言えた。上原一年目にわたしの熱が最高潮に達していて正月特番まで欠かさず見ていた。学生時代はドームの売り子もした。小さい頃からの夢がひとつ叶ってとても嬉しかった。

社会人になってそういう熱狂的なものはあまり覚えがない代わりに、ずっと行けなかった海外旅行をこじらせてしまい、仕事を辞めて半年ほどバックパッカーになった。カメラ女子がカメラ業界を賑わせていたいたのと同じ頃である。当然、乗っかっていた。宮崎あおいオリンパスCMから始まったカメラ女子ブームは、新しい雑誌がいくつも生まれ、最終的にはミラーレスブームの先駆けになっていく。わたしはCMの影響でオリンパスの一眼と、宮崎あおいがファイルム派だと知ればフィルムカメラも買い、旅に持って行った。二台は重かったね…カメラも勉強してしばらく撮ってた。余談だがこの経験はのちに家電量販店の販売員としてスキルを発揮する…なにが起こるかわからないね。

旅から帰ったころ夏のオリンピックが始まっていて、たまたま見たサッカーの試合が期待されていない中での勝利だったらしく日本中が沸き立っていた。スポーツバーに目覚め、サッカー雑誌を買い漁り、選手の名前を覚えて移籍の話を理解するために各チームの勉強をした。新聞に大きく取り上げられれば購入し、移籍の噂に一喜一憂した。写真集も代表のレプリカユニもタオマフも買った。地元チームの試合にも通うようになった。ルールもわからないところから一気に濃いところまで浸かった。

どの熱もその時は最高潮に燃えていて、いつしか鎮火している。

最近はまた新たな火種が見つかって、ごうごう燃えている真っ只中。今年の春、ちょっと興味があった舞台を観劇した。過去にシルクドソレイユや劇団四季を観たことはあったけれど「ハマる」ということはなかったのに、なんだろう、わたしのタイミングにも合ったんだと思う。足を滑らせたまま沼に落ちてしまった。

もともとライブ感のあるものが大好きでお祭り騒ぎは一緒に乗っかって騒ぎたいタイプだった。だからかもしれない。舞台はまさに生、その一瞬しかない輝きに多くの人が惹かれるのと同じように魅せられてしまった。その一度しかない体験をまた味わいたくて、でも国内公演は千秋楽まですべてSold out…そんなとき海外公演が決まった。チケットを購入して切れていたパスポートを更新し、発行されるまでの期間で航空券とホテルを取った。不備があって落ちていたら全てが無駄になるというめちゃくちゃ期間の短い中、転職後の貯金もまったくない状態でなにやってるんだろうと思いながらも「今しかない一瞬を逃してたまるか」という意地だけで準備した。ドタバタの中、有給もまだないので週末だけで行った中国公演は死ぬほど楽しかった。国内では味わえない臨場感と、しばらく休憩を得た役者たちの声量、歌唱力は抜群に上がっていてこれもまた生の観劇の魅力なんだと思い知った。

それからこの公演でファンになってしまった役者さんのファンミや別舞台にも積極的に参加するようになってしまった。写真集発売、連続ドラマ初出演、推すなら今だ。この界隈に足を踏み入れて初めて知ったんだけれど、舞台挨拶やトークイベント、写真集、バスツアー、誕生日イベント……役者本人に会える機会が結構ある。これはなかなかびっくりした。わたしが観る舞台はほぼ若手俳優なのでいろんなところで売れてほしい、露出が増えてほしい。

そして半年経った秋。まだ熱は冷めやらず、新作公演のチケット争奪戦に奔走し続けている。正直、公演のほとんどが東京なので交通費や宿泊費で給与の8割以上が飛んで行ってるし、先行や抽選の度重なる「落選」「ご用意できませんでした」の文字に情緒不安定に陥りがちだけど、またあの生の臨場感を味わいたくて辞められない。どうにかもぎ取った観劇を思い浮かべて日々仕事をする、あぁ、幸せ以外のなにものでもないな。

ジャンルが変わっても浪費は終わらないし、振り返ればわたしの人生そのものだった。来年はまた別のことでわぁわぁ騒いでるかもしれないし、まだ舞台を見続けてるかもしれない。浪費とはとことん付き合っていくしかないような気がする。